セカンドライフを語る2つの視点

最近読んだセカンドライフに関する2つの視点をご紹介。
「港区赤坂四畳半社長」のブログは、「セカンドライフの失敗から学ぶべきいくつかのこと」のタイトルで、

さすがにそろそろ公然と「セカンドライフは失敗したね」と言っても世間様に受け入れていただけそうな空気になってきたので、思っていたことをぐだぐだ書いてみたいと思います。【港区赤坂四畳半社長

とすでに「失敗した」との前提で書き進める。

一方、これに対する反論を掲げるブログ「Words from Second Life」は、

そもそも金儲けですバブルですで踊ってやってきた人はほとんどセカンドライフ続けてないってこと。
証拠にブログ等でセカンドライフを叩く人はほとんどビジネスモデルがどうとか、人がいない(こない)とかそんなところにしか目が行っていない。【Words from Second Life

と批判する。

「社長」は、失敗の根拠として次のようなインフラ面での脆弱さを指摘しています。

  1. サーバーの処理能力が低い
  2. ビジネスモデルが未熟
  3. システムの自由度が低い
  4. 急速に普及させすぎた

全くその通りです。ただ、インフラ面を除いても、大企業SIMなどは最初から集客力がなく、コマーシャル効果も薄かったと言えます。努力不足といえばそれまでですが、メディアに取り上げられることで広告効果があったことを考えると、それ以上に効果は望んでいなかったのかもしれません。安価に宣伝できるという点で企業は参加したようにも見受けられます。

一方で、「住民のコミュニティ」に主眼を置くSIMは比較的賑わっているのは事実。SIM運営者は土地のレンタルなどで一定の収益を確保できるモデルと言えます。

もちろん、大本のリンデンラボが収益を確保できなくなれば、セカンドライフ自体が崩壊してしまう。「社長」は「失敗した」と指摘していますが、早晩セカンドライフの世界が「崩壊する」とまでは言明しておらず、「失敗」とは何を指すのかがややあいまいです。デッドプール入りということなのでしょうか。

別に大企業が入ってこなくても、収支のバランスが取れれば運営はできる。もちろん、内部に問題があれば、総合格闘技の「PRIDE」のように集客力があっても崩壊する例はあります。ただ、セカンドライフの場合は、「名前」だけは結構浸透していますから、仮に資金繰りが苦しくなったとしても、googleマイクロソフトによる買収も考えられるでしょうし、「崩壊」はないと思います。

「Words」の方は、セカンドライフを楽しむ側から、「金儲け」の視点で語ろうとするやり方への強い反発を表明しています。「ビジネス」としての視点と「コミュニティ」としての視点の対立。経済学と社会学の対立ということでしょうか。私自身が仮想空間について関心があるのも、経済、ビジネスの要素ではなく、コミュニケーションとか文化、社会構造の視点です。

社会構造と言えば、「社長」ブログで紹介されているハビタットについての論文が面白い。「ハビタットには5種類の人間がいる」として、次の5つに分類しています。

  1. 受動者
  2. 能動者
  3. 先導者
  4. 介護者
  5. 神様

それぞれの役割が何を指すかは論文を読んでいただくとして、この5区分は、セカンドライフでも適用できる。私は「能動者」と「受動者」の中間だったが、最近は「受動者」に転落したなあとか、個人でSIMを運営しているJさんみたいな人を「先導者」と呼ぶんだなあとか。セカンドライフ内の人間関係と社会関係を図式化してみたり。

仮想空間にログインしてみようという人はまだまだ少数派。それなのに「上から目線」でビジネス的な思惑が先行したのが間違いなのです。パソコンやファミコンが登場してきたときのように、イノベーターな人々が楽しんでから、何かのはずみで火が付くという「下から」のブームが起きるまで、まだ時間がかかりそうです。