キン肉マンのこと

今年で29周年だという。キン肉マンである。私がキン肉マンを知ったきっかけが何であったか。今考えてみても思い出せないのだが、小学1年生のときに初めてジャンプを買ったのは、Drスランプでもキャプテン翼でもなく、キン肉マンを読むためだった。今でも鮮明に覚えているが、巻頭カラーでキン肉マンが悪魔将軍をキン肉ドライバーで倒す場面だった。バラバラになった悪魔将軍が再生しようとするところにバッファローマンが飛び込むシーンも印象的だった。「黄金のマスク編」の最終回だ。それからジャンプを買うようになった。中学3年生まで毎週かかさずだ。

リアルタイムで読んだのは、タッグトーナメント編と王位争奪戦だけで、それ以前はコミックスで全部読んだ。いずれにしても全話読んでいる。

キン肉マンに関して忘れられないのは、私が小学校2年生で交通事故にあった日のことだ。自転車のかごにジャンプを入れた私は友人と二人乗りをしているときに、交差点でタクシーと衝突した。救急車で奥沢の大脇病院に運ばれ、色々な検査を受けたが、スネを縫うだけで済んだ。それで家族が迎えに来るまでロビーでジャンプを読んでいたら、あんまりにも脳天気な様子だったので心配して飛んできた母親が驚いたという話は今でもときどき家族内で話題に上る。

ジャンプを病院で読んでいた記憶ははっきりと残っていて、それもキン肉マンを読んでいた記憶があった。タッグトーナメント編でケンダマンとスクリューキッドが暴れ回っている回だったと思う。交通事故の現場からジャンプを自分でつかんで病院まで持って行ったのだろうか。事故に遭おうとキン肉マンは手放せなかったのに違いない。それぐらい夢中だったのは確かだ。

緑書房という行きつけの本屋さんでコミックスが発売日なのに売り切れで、自由が丘まで自転車を飛ばして買いに行ったこと。途中、作者の病気で中断したときのことも今でも忘れられない思い出である。あれは確か夏だった。4年生になっていた。中根小学校の体育館でプール開きか何かの集会があって、そこでキン肉マンが休載されたときのシーンを友達と真似っこしたのである。プールでマッスルインフェルノに挑戦したこともあったと思う。

ただ、最後まで熱心な読者だったかというと自信はない。王位争奪戦の終盤になってくると、ジャンプを買ってから読む順番でも、ドラゴンボールや聖闘士聖矢などに抜かれ、後の方になっていった。「早く終わった方がいいんじゃないかな」とさえ感じるようになっていったのである。それが「一つの時代」の終わりというものだ。キン肉マンには幼い日を回顧することの喜びと哀しみが詰まっている。