ミシュラン余熱

予想外に星の数が多かったこともあってか、各方面でミシュラン東京版の話題が続いています。発売は今日(22日)でした。私は買っていませんが、単純にお祭り騒ぎとして楽しめばいい。

それでも、ひねくれたものの見方は常に存在するものです。否定的な見方としては、そもそも料理を採点するのはおかしいという根源的なものを除いて、

  1. ヨーロッパ人に和食が分かるのか?
  2. 星の数が異常に多いのは実情を反映していない大甘な採点

という2点に集約できる。

1は永遠のテーマで、「日本人にシェークスピアは分かるのか」「日本人にベースボールが分かるのか」云々というところにつながってくる問題です。分かる人もいれば、分からない人もいるとしか言いようがない。何しろ審査したのは覆面調査員ですからと鷹揚に構えるべきです。

手塚治虫はかつて「漫画=おやつ」論を展開しましたが、この言によれば、ミシュランの三つ星というのは、本に喩えれば、差し詰めノーベル文学賞にでも相当するのでしょうか。高尚ではあるが誰も読んだことがない(食べたことがない)。そんな落ちが付きそうですが。

東京のレストランがハイレベルなのは間違いないでしょう。イギリスの建築家リチャード・ロジャース氏は7年前に、東京の食を「世界一」と持ち上げています*1。エッセイストの玉村豊男氏も「東京の料理の質はパリよりも高い」(朝日新聞2007年11月22日朝刊)と言い切っています。

しかし、過剰な星の数はどうなのか。こういうものは少ないから有り難がられるものです。ミシュランの権威がノーベル文学賞レベルから現在の芥川賞レベルになったのかもしれませんし、「大人の事情」と言うか、ビジネスの問題なのかもしれません。

各レストランは毎年、精査されるそうですが、150軒が急に100軒に激減するわけにいかないでしょう。それに、今後は対象のレストランを増やすそうなので、確率的には星の数が増えてこそすれ、減ることはないのではないか。そう考えると、やっぱり最初に大盤振る舞いし過ぎた感はあります。

MICHELIN GUIDE東京 2008 (2008)

MICHELIN GUIDE東京 2008 (2008)

*1:2000年8月24日の産経新聞夕刊の記事。インタビューの中で「特に食の分野では、いまや世界一ではないですか」と発言している。ちなみにロジャース氏の奥さんはレストラン経営